僕綿貫

「僕はたぬき」という表現がある。その文脈でいう「僕がたぬき」という表現がありえないかといえば、ありえる。
シチュエーションとしては、「たぬきのお客様はいらっしゃいますか?」「僕がたぬきです」という感じ。


始めの会話は「たぬきのお客様はどちらですか?」の方がより自然だろう。この例文が奇妙な面白みを含んでいるのは、たぬきという省略表現のせいなのではないかと思う。「店長オススメおむらいす」*1だったら、こういう面白みは多分ない。


こういう文を見るたびに思うのは、日本語は英語と同じ感覚で主語・動詞と言って良い言語ではないということ。まあ、英語的な感覚でいえば、代名詞の代わりに目的語が直接的に主語になっているような文法があるような感じ。しかし、日本語は英語ではないので、英語向けの文法用語を使っては理解できないだろう。それに、英語だって、外国人向けの“文法的に正しい”英語から外れれば、一般の人はもっと無茶苦茶な表現をしているはずだ。3重否定だけど2重否定の強調だから肯定文だ、とかなくなくなくない?*2

*1:恥ずかしい料理名の検索でトップだった

*2:なくない? という表現の最後の「ない?」は反語表現であって否定ではないと思う。文法学者じゃないから良く分からないけど。