メモリーと言えば

『小説の誕生』で保坂和志は、作家の持てるテーマは、1つか2つと言っていた。ぼくも経験的にその通りだと思う。少ないと感じるかもしれないが、多くの人は1つか2つのテーマしか持っていないし、考えるところはあっても形に残さず終わることがほとんどだろう。だとすれば、表現できて、それが他者に受け入れられただけで万々歳だと思う。
それはしかしここで言いたいことではなくて、ハンターハンターの念能力は、あらゆる能力のメタファーに向いているなあと思うと言ってみたい。特に、ヒソカの性格診断とメモリーの話は秀逸だ。念能力者がモノにできる技は2つくらいが限度だし、自分の系統にあっていなければ上手く能力を発揮できない。作家とそのテーマもそんな感じじゃないだろうか。
とはいえ、冨樫は休載の暗黒面に堕ちたようなので、冨樫自身はどうなのかとか、分かっていることと実践することは違うなと思うのだが、一度流通してしまったなら、作品の方を主体に考えれば作家なんてどうでも良いので、続きを欠くことでハンターハンターは無限の可能性を得たのだとか言ってみれば、将来は無限に広がっているとか思っている厨房思考なら誤魔化せるかも。可能性があることなんて、何にもなってないってだけなんだけどね。
この文節のテーマは、入試試験的には何になるんだろうな。少なくとも、作者(ぼく)の考えていることは、自分自身明確に把握しているわけではなくて、ただ思ったことをつらつら書いているだけというのが正解なんだけど。作家も、具体的にテーマを意識していたらそれに言及せざるを得なくなって、具体的にその一言で書けるようならわざわざ小説にする必要はなく、それでは作家足り得ないわけだから、結局は一言に言い切れるような形になることなく書いていくんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろうな。一遍小説でも書いてみないことには分からないだろうな。