人の頭脳は、答を導き出す僅か前に、分かったという信号を発する。

森博嗣カクレカラクリ読了。夏の間、何だか時間を取れなくて、MORI LOG ACADEMYを見ていなかった。それで、9月の20日くらいに久々にまとめて読み返してみたら、兼ねてからアナウンスがあったカクレカラクリが9月13日に放送されていたということを知って、がっかりしたものだ。webで情報を見る限り、原作とは主人公の名前からして違うし(多分、滑舌が良くないとグンジって発音しにくいんだろう)、評判もイマイチなので、見なくて正解だったかもしれない。視聴率で考えたらキャッチーな方が良いんだろうけれど、DVDなんかを販売することを考えたら、原作に忠実でないにしても、丁寧に作り込んだ方が売れるだろう。テレビ局的に、どちらに重きをおくかといえばバリバリにスポンサーが付いていることだし、視聴率を優先させた方が良いだろうけど、映像屋としてそれでいいのだろうか。見てないのに言ってること。


本の中で、最後に出てきた記号を見て、ようやく何を表しているかが分かった。結構ありきたりというか単純なモノ。それから、本を読みながら「前から見ると円形、横から見ると四角、そして上から見ると三角」とというヤツを頭の中で思い描いていたんだけど、どうにもイメージできなかった。仕方がないから、目の前にあった扁平なお椀みたいなモノを手にとって回してみたら、すぐに思いついた。その後で、海苔を入れる缶を眺めて、やっぱり、と確信。全然特別な形状ではない。目の前にある程度ヒントになる物を置けば、すぐに分かる。しかし、自分の3次元投影力の弱さを思い知らされる。チッ、EQの時代だから良いんだよ。殆ど正解までヒントを書いておくことで、逆にミスリーディングというか、創造力を奪ってしまうレトリックなのかも知れない。きっと書き方が褒め殺しみたいな意地悪さを持っているのだ。そもそも、円形を正面だと言ってしまうのが酷い。円形を底だと思って考えれば、結構自然な形だ。「紙コップで、そんな形のものがあるわね」とあったが、それは潰れた形だ。


読後直後の感想は、青春小説だった、ということ。アニメからラノベ界隈に出たり引っ込んだりしている人間にとっては実に美味しい。120周年なのはコカ・コーラの方。読んでいる間じゅう、雛見沢のイメージがつきまとったのだが、どうなのだろうか。単発モノだからか、謎解きも読みながらできてしまって、それはぼくの読解力が上がったというよりは、森博嗣が読者に優しくなった結果だろう。読者のターゲット年齢を少し下げてあるのかも知れない。作品を出すごとに森博嗣は読者に優しくなっているというか、商業的に成功するように動いているように感じられる。それで稼ぐ人という意味でプロだ。


Gシリーズを読んだ後に、すべてがFになるあたりを読むと、そのあまりの説明過剰ぶりに驚かされる。S&Mシリーズはテーマも解法も与えられた学士レベル、Vシリーズは解法のヒントだけもらえる修士レベル、Gシリーズは何か意義のあるものを自分で探し出せといわれる博士レベル、だと思っているのだが、別にそんなに専門的な話ではなくて、エンターテインメント。マイナーという意味では専門的かもしれない。