「死神の見る夢は、黒より暗い暗闇か?」

DARKER THAN BLACK 黒の契約者の第25話。
んー、カウボーイ・ビバップだと思っていたのに、急にエヴァになられても面食らうぞ? 25話でお終いというのもよくわからない。家弓さんのセリフで設定やら背景やらを一応は解消させたんだろうけれど、もうちょっと尺が必要だったというか、もう1話あればよかったのにね。

前回で、白が電撃使いだということはほとんど明かされていたから、何らかの形で黒がその能力を引き継いだんだろうということは分かっていたものの、人間と契約者のどっちつかずってどんな状態だろうか。だから対価らしい対価がなかったのか。白の対価は黒に抱かれていることらしかったから、黒自身の場合は、白の能力として能力を使っている限り常に対価は払っていることになるんだろうけれど。

ニックを出してきたのは当然というか、効果的に思う。しかし、白のキャラクターが不明なままなので、エウレカのダイアン並みに、重要なのに実体的な意味のない存在になってしまっている。本来ならハヴォックの回でもう少し回想できれば良かったのかも知れないけれど、あの時点ではもうちょっと秘密にしておいた方が全体の構成としては良かったはずで、じゃあどこで妹の情報を出したら良かったのかは難しい。基本的に回想に頼るのはしょぼい脚本というイメージがあるし、キャラクターに過去は必要だけど、明確に表示するのは難しいよな。FF8みたいなトリッキーな方法もいいけど、効果的に使うのは難しいし。


別に契約者が何と契約したかは明かさなくても話として成立するけれど、今やっていることがどういうことなのか良く分からない感じ。最終話でそれをやると回収できないものだからもやもやするなあ。しかし、契約した段階で契約者は契約者として完成するのではなくて、その後も変化し続けるのだというのは、当然のようでいて割と忘れがちなことなので、それを描いてきたのはかなり良かったと思う。人間が変化していくのは当然なのだ。特殊な能力を持っているキャラクターだけ不変だというのは、やっぱり不自然なのだ。


今回を見た限りの感想では、白はヒロインではなく、アンバーも狂言回しに過ぎず、結局銀がヒロインだったということ。男は船、女は港という言葉があるが、男を繋ぎ止めるのが女の役目だとすれば、銀は完全に女。私を一人にしないでって、最強の繋ぎ止める言葉じゃないか。最後に主体を示し、「猫ちゃん」を拾い。観測霊が人型になったということは、魂が人間のレベルにまで回復したというか成長したという表現なんじゃないかと思う。銀のシルエットを示しているだけではなくて。
未咲はヒロイン未満だよなあ。見守る人くらいの役目だよな。あとは、いつからBK201の正体に気付いていたか、ちゃんと描かれているかどうか見返してみると面白いかもな。もっとも、ぼくは基本的に同じ作品を何度も見たりしないけれど。


あとから気が付いたのだが、そういえば、未咲は身体検査を受けてレコーダを回収されたんだった。未咲のスーツのポケットが殊更青く光ったのは、つまりそれが移動したか構成されて出現したということ。それが黒の能力の奥底。シュレーダー博士が説明していたのはそういうこと。見返さなくても、それくらいは思い出せる。もっと細かい描写となるとできないけど。ああ、何で見ているときに気が付かないのかな。それが頭の回転の遅さってやつか……。森博嗣でいえば芸大をサボっているやつかそれ以下レベルだなあ。ちぇ。

ロミオ×ジュリエット

GONZOのやつ。ぼくの最終的な印象としては、岩男潤子が「木を枯らさないで」という話*1
ヴェローナや馬が空を飛んだり、エスカラスが木になったりする必要はまるでなかったのでは。岩窟王の場合は事情があったから翻案も折衷的な解決法としてありだと思うけれど、今回のは何でそうなったのか良く分からないために、妙な翻案をしたな、という印象が拭えない。アニメでどこまで演劇できるかという方向性でも良かったはずなのに、なんでこんな妙な舞台になったのか。もう完全なSFにしてしまって、スターウォーズのように一周して神話みたいな風にしても良かったのに。うーん、それだと厳窟王の二番煎じみたいになってしまうか。といっても、ロミオとジュリエットを持ってくる当たり十分に二匹目っぽさはあるんだから、同じ路線でも良かったかも知れないのにな。企画が進んでいった過程を知りたいようなどうでも良いような。

*1:蛇足だが、PS版のTALES OF PHANTASIAのマーテルのセリフとCV。

僕綿貫

「僕はたぬき」という表現がある。その文脈でいう「僕がたぬき」という表現がありえないかといえば、ありえる。
シチュエーションとしては、「たぬきのお客様はいらっしゃいますか?」「僕がたぬきです」という感じ。


始めの会話は「たぬきのお客様はどちらですか?」の方がより自然だろう。この例文が奇妙な面白みを含んでいるのは、たぬきという省略表現のせいなのではないかと思う。「店長オススメおむらいす」*1だったら、こういう面白みは多分ない。


こういう文を見るたびに思うのは、日本語は英語と同じ感覚で主語・動詞と言って良い言語ではないということ。まあ、英語的な感覚でいえば、代名詞の代わりに目的語が直接的に主語になっているような文法があるような感じ。しかし、日本語は英語ではないので、英語向けの文法用語を使っては理解できないだろう。それに、英語だって、外国人向けの“文法的に正しい”英語から外れれば、一般の人はもっと無茶苦茶な表現をしているはずだ。3重否定だけど2重否定の強調だから肯定文だ、とかなくなくなくない?*2

*1:恥ずかしい料理名の検索でトップだった

*2:なくない? という表現の最後の「ない?」は反語表現であって否定ではないと思う。文法学者じゃないから良く分からないけど。